「確定申告のやり方」の記事で少し触れた「何を経費にできるか」について、この記事では実務目線でもう少し詳しく整理します。クラウドワークスやココナラ、アフィリエイトブログのような副業を想定し、経費として認められるものの考え方、自宅の家賃・通信費をどう按分するか、そして誤解されやすい「青色申告の65万円控除」との関係まで扱います。
経費として認められるかどうかの基本ルール
副業の所得(多くの場合は雑所得)を計算するときの式はシンプルです。
総収入金額 − 必要経費 = 所得金額
ここでいう必要経費は、国税庁の説明に沿えば「その収入を得るために直接必要だった費用」です。つまり、単に「副業をしている間に使ったお金」ではなく、その副業の収入を得るために直接つながっている支出かどうかが判断基準になります。この原則は、雑所得でも事業所得でも変わりません。
具体的に経費になりやすいもの
クラウドソーシングやブログ・アフィリエイト系の副業でよく経費計上されるのは、次のようなものです。
- 通信費:業務で使った分の携帯電話代・自宅インターネット代(家事按分については後述)
- ツール・サブスクリプション費用:AIツール(ChatGPT Plusなど)、画像素材、サーバー・ドメイン代
- 書籍・資料代、副業に関連するセミナー・講座の受講料
- プラットフォームの手数料:クラウドワークスやココナラのシステム利用手数料、振込手数料
- 業務のために直接使った交通費(打ち合わせや取材のための移動など)
これらはいずれも「その副業の収入を得るために直接必要だった費用」という原則に沿った例です。
家事按分:自宅の家賃・光熱費・通信費をどう分けるか
自宅で作業する場合、家賃や電気代、通信費は「生活費」と「経費」が混ざった支出(家事関連費)になります。これをどう扱うかは、国税庁の基本通達で示されている考え方が基準です。
- 業務で使っている割合が明らかに区分できる場合は、その按分できる部分だけを経費にできます。
- 実務では、部屋の床面積のうち仕事用スペースが占める割合(家賃)、業務で使っている時間の割合(電気代)、業務利用の割合(通信費、目安として3〜5割程度で計上されるケースが多い)など、合理的な基準で按分するのが一般的です。
按分の割合そのものに絶対的な正解があるわけではありませんが、「なぜその割合にしたか」を自分で説明できること、毎年同じ考え方で計算していることが重要です。極端に高い割合(自宅家賃の8割を経費にする、など)は、税務署から説明を求められた際に根拠を示しにくくなります。
パソコンなど高額なものを買った場合
副業用にパソコンを購入した場合、金額によって扱いが変わります。
- 10万円未満:購入した年に全額を経費にできます(消耗品費)。
- 10万円以上40万円未満(2026年4月1日以降に取得したものが対象。それより前に取得した場合は30万円未満が基準です):原則は耐用年数(パソコンは4年)にわたって減価償却しますが、3年で均等償却する「一括償却資産」という方法も選べます。一括償却資産は白色申告でも使えます。
- 一方、「少額減価償却資産の特例」(取得価額の全額を購入年に経費にできる特例)は、青色申告をしている事業者専用の制度で、白色申告や雑所得の副業には使えません。
経費にならない・誤解しやすいもの
次のようなものは、副業に関係していそうに見えても経費として認められにくいものです。
- 所得税・住民税そのもの
- 罰金・科料
- ジムの会費や健康診断の費用
- ローンの元本返済部分(事業のための借入の「利息」部分は対象になり得ますが、元本は対象外)
- 普段着として使えるスーツや服(明らかに業務専用の制服・衣装などでない限り、対象外とされやすい)
共通しているのは、「副業の収入を得るために直接必要だったと説明できるか」という基準です。生活費との境目があいまいな支出ほど、税務署から見て説明を求められやすくなります。
記帳・領収書の保存は白色申告でも必要
「白色申告だから記帳は不要」というのは誤解です。2014年の制度改正以降、事業所得などがある人は、白色申告でも簡易な帳簿(日付・取引先・金額を記録したもの)をつける義務があります。雑所得の副業についても、前年の業務にかかる収入が300万円を超える場合は、現金・預貯金の取引を記録した書類(請求書・領収書など)の保存が必要になり、1,000万円を超える場合は収支内訳書の添付も必要です。
領収書・請求書などの保存期間は、白色申告の基準では帳簿が7年、その他の書類は概ね5年が目安とされています。金額の大小にかかわらず、副業を続けるつもりなら領収書は一定期間取っておく習慣をつけておくのが無難です。
「青色申告の65万円控除」は雑所得には使えない
副業の節税というと「青色申告で65万円控除」という話を目にすることがありますが、これは雑所得の副業には使えません。国税庁の説明でも、この特別控除は「事業所得または不動産所得を生ずべき事業を営んでいる」ことが条件とされており、雑所得は対象外です。
継続的に帳簿をつけ、契約書や請求書などの記録をきちんと残していくことは、副業の所得区分が事業所得と認められやすくなる材料にはなり得ますが、それは経費の計上ルールそのものとは別の話です。経費として認められる範囲(この記事で扱ってきた内容)は雑所得でも事業所得でも共通していて、変わるのは青色申告の特別控除や損失の繰り越しといった、事業所得ならではの追加の優遇措置の部分です。
なお、青色申告の特別控除には2027年分の所得から75万円の区分が新設される予定ですが、これは電子申告や優良な電子帳簿の保存が条件になる見込みで、2026年分の申告にはまだ関係ありません。
まとめ
副業の経費は、「その収入を得るために直接必要だったかどうか」が判断の軸です。通信費やツール代、手数料などは経費になりやすい一方、生活費との境目があいまいな支出は、按分の根拠を自分で説明できることが重要になります。白色申告でも帳簿・領収書の保存は必要で、青色申告の65万円控除は雑所得の副業には使えない点も、あわせて押さえておきたいポイントです。判断に迷う支出があれば、税務署や税理士に確認するのが確実です。